3歳で父に手ほどきを受けて以来、能ひとすじに約半世紀を生きてきた辰巳満次郎さん。演劇との相違などを足がかりに、能の魅力をユーモアたっぷりに解説してくれます。
微妙な所作から、演者の内面に充満する感情を想像するのが能の醍醐味。稽古した曲を演じるのが数十年後ということは珍しくなく、本番は一回限りであるのも歌舞伎などと異なるところ。「邯鄲」の一節を演じる辰巳さんの美声にスタジオはうっとり。幽玄の世界が身近に感じられる楽しいトークです。
プラスワンでは、能の鑑賞法をさらに手ほどき。「能を見て寝るのは日本人だけ」という事実が語るように、無理にわかろうとせず、自然体で向き合うのが理想的な楽しみ方であると辰巳さんは説きます。能舞台の構造や衣装の美しさ。茶、華、書にも通じる「序破急」の神髄。傾けるだけで表情を変える能面の不思議。シェークスピアも演目となる懐の深さ。神への捧げものとして始まった能は、いつしか人間も観賞する芸能に。その深遠さは、決して難解なものではないのです。