古典落語の名手として人気の高い瀧川鯉昇さんは、演芸好きの祖父と一緒に聴いたラジオ番組で落語に魅了され、小学生時代から勉強そっちのけで落語全集を読み耽りました。おかげでいつも落第すれすれ。見かねた先生が小咄をやらせて及第点をくれた思い出もあります。
初めて師事した8代目春風亭小柳枝さんは、浮浪生活の末に落語をやめて出家した破天荒な人物。そんなかつての師匠の影響なのか、鯉昇さんの楽しみは自分の失敗談を自慢することです。電車で足を踏まれたら「大丈夫ですか?」と踏んだ当人に聞いてみるなど、日頃から落語的な状況を探求。曰く、「落語的な視点とは、すなわち物事を斜めに見ること」。物事を真正面から見て腹を立てたりしないのが肝要なのです。
「総入れ歯も1本欠けているぐらいがいい」と語る鯉昇さんの目標はいつも98点。完璧などありえないから、やるべきことを常に未来に残しておく。すべては途中経過に過ぎないので、動きながら進化する――飄々とした語りの中に、話芸の本質を伺い知ることのできる30分です。