ロシア文学やロシアン・アバンギャルド芸術の研究を続けている浦雅春さん。大学を卒業後、一度就職してから本格的にロシア語を読み始め、チェーホフの奥深さに魅せられました。
冷戦構造の崩壊以降、社会が方向性を失っている現代の世相は、農奴解放が挫折した19世紀末のロシアに似ていると語る浦さん。明確な目標を持てず、ひょっとしたら無意味かもしれない人生を右往左往しながら生きるチェーホフ作品の登場人物が、現代人の心ともよく通じ合うようです。東京大学大学院では、ロシア文学の他に表象文化論が専門。芸術表現を政治的に検証するなど、さまざまな横断的研究ができる学問です。
番組後半は、浦さんが江戸弁に訳出したゴーゴリ作品が話題に。ラジオデイズのために柳家三三さんと入船亭扇辰さんが行った朗読会は、「ゴーゴリが声でよみがえった」と訳者自身が驚くほどの大成功。ロシアには文芸作品をサロンで朗読する伝統もあり、ゴーゴリ自身も朗読の名手でした。ユニークな視点の文学談義から、1世紀以上前のロシアがとても身近に感じられます。